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幸福な王子

✦ スナック翻訳版

オスカー・ワイルド · 0/100

Snack Point

✦ 宝石と金箔に覆われた王子の像と、渡り鳥のツバメ。二つの魂が織りなす、自己犠牲と真の美しさの物語。

✦ 1888年発表。オスカー・ワイルドの童話集『幸福な王子とその他の物語』の表題作。

✦ 子供にも大人にも響く永遠の名作。ラストの二つの宝物が胸に刺さる。

目次

登場人物

幸福な王子 — 街を見下ろす黄金の像。生前は宮殿の中で幸福に暮らし、死後に街の苦しみを知る
ツバメ — エジプトへ渡る途中の小さな渡り鳥。王子の使者として宝石と金箔を貧しい人々に届ける

底本情報

公開: Project Gutenberg
底本: 「The Happy Prince and Other Tales」Oscar Wilde
初出: 1888年
章構成: 章分けはSnackReadが独自に付与
※AIによる翻訳・現代語訳版
#01 黄金の王子像
#01 黄金の王子像1/10

街の高みに、高い円柱の上に、幸福な王子の像が立っていた。 全身は薄い純金の葉で覆われ、目には二つの輝くサファイア、剣の柄には大きな赤いルビーが光っていた。

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#01 黄金の王子像2/10

王子は大いに称賛されていた。「風見鶏と同じくらい美しい」と、芸術的センスで名を上げたい市会議員のひとりが言った。 「ただ、あれほど実用的ではないが」と、非現実的だと思われるのを恐れて付け加えた。

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#01 黄金の王子像3/10

「どうして幸福な王子みたいにできないの?」月がほしいと泣く息子に、しっかり者の母親が言った。 「幸福な王子は何かがほしいと泣いたりしないのよ」

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#01 黄金の王子像4/10

「この世に完全に幸福な者がいるとは嬉しいことだ」と、失意の男がその見事な像を見上げてつぶやいた。

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#01 黄金の王子像5/10

「まるで天使みたい」と、真っ赤なマントに白いエプロンをつけた慈善学校の子どもたちが大聖堂から出てきて言った。 「どうしてわかるんだ?」と算数の先生が言った。「見たこともないだろう」

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#01 黄金の王子像6/10

「ああ、でも夢で見たもん」と子どもたちが答えた。 算数の先生は眉をひそめ、厳しい顔をした。子どもが夢を見ることを認めない人だったのだ。

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#01 黄金の王子像7/10

ある夜、一羽の小さなツバメが街の上を飛んでいた。 仲間は六週間前にエジプトへ発ったが、彼はひとり残っていた。美しい葦に恋をしていたのだ。 春の初め、大きな黄色い蛾を追って川を飛んでいたとき、彼女の細い腰に惹かれて話しかけたのだった。

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#01 黄金の王子像8/10

「君を愛してもいい?」と、単刀直入が好きなツバメは言った。葦は深くお辞儀をした。 ツバメは翼で水面に触れ、銀色のさざ波を立てながら葦の周りを何度も飛んだ。それが彼の求愛で、ひと夏じゅう続いた。

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#01 黄金の王子像9/10

「ばかげた恋だ」と他のツバメたちはさえずった。 「彼女にはお金もないし、親戚が多すぎる」 たしかに川は葦だらけだった。やがて秋が来ると、みな飛び去っていった。

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#01 黄金の王子像10/10

仲間が去ると寂しくなり、恋人にも飽き始めた。 「彼女は話がつまらない」と彼は言った。「それに浮気者だ。いつも風と戯れている」 たしかに風が吹くたび、葦はこの上なく優雅にお辞儀をした。

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#01 黄金の王子像

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#02 ツバメの旅立
#02 ツバメの旅立1/10

「家庭的なのは認める」と彼は続けた。 「でも僕は旅が好きだ。だから妻も旅好きでなくては」

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#02 ツバメの旅立2/10

「僕と一緒に行かない?」と彼はとうとう言った。 しかし葦は首を横に振った。故郷が大好きだったのだ。

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#02 ツバメの旅立3/10

「僕をもてあそんでいたんだな」と彼は叫んだ。 「ピラミッドへ行くよ。さようなら!」 そして飛び去った。

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#02 ツバメの旅立4/10

一日じゅう飛び続け、夜になって街に着いた。 「どこに泊まろう?」と彼は言った。「街が準備してくれているといいが」

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#02 ツバメの旅立5/10

すると高い円柱の上に像が見えた。 「あそこに泊まろう」と彼は叫んだ。「見晴らしもいいし、新鮮な空気もたっぷりだ」 そして幸福な王子の足もとにとまった。

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#02 ツバメの旅立6/10

「金色の寝室だ」と周りを見回して小さくつぶやき、眠る支度をした。 ところが頭を翼の下に入れようとしたとき、大きな水滴がぽたりと落ちてきた。

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#02 ツバメの旅立7/10

「おかしいな!」と彼は叫んだ。 「空には雲ひとつなく、星もくっきり輝いているのに、雨が降るとは。北ヨーロッパの気候はひどいものだ。葦は雨が好きだったが、あれは単なるわがままだ」

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#02 ツバメの旅立8/10

するとまた一滴落ちてきた。 「雨も防げない像に何の意味がある?」と彼は言った。「いい煙突を探さなくては」 そして飛び立とうと決めた。

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#02 ツバメの旅立9/10

だが翼を広げる前に、三滴目が落ちてきた。 見上げると――ああ! 彼は何を見たのだろう?

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#02 ツバメの旅立10/10

幸福な王子の目は涙であふれ、黄金の頬を涙が伝い落ちていた。 月明かりに照らされた王子の顔はあまりに美しく、小さなツバメは哀れみで胸がいっぱいになった。

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#02 ツバメの旅立

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#03 王子の涙
#03 王子の涙1/10

「あなたは誰?」とツバメは言った。

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#03 王子の涙2/10

「私は幸福な王子だ」

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#03 王子の涙3/10

「それなのにどうして泣いているの?」とツバメは聞いた。「びしょ濡れだよ」

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#03 王子の涙4/10

「生きていた頃、人間の心を持っていた頃」と像は答えた。 「私は涙を知らなかった。サンスーシ宮殿に暮らし、悲しみは入ることを許されなかった。 昼は庭で友と遊び、夜は大広間で舞踏の先頭に立った」

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#03 王子の涙5/10

「庭のまわりにはとても高い壁があったが、その向こうに何があるかなど気にもしなかった。周りのすべてが美しかったから。 廷臣たちは私を幸福な王子と呼び、快楽が幸福なら、たしかに私は幸福だった。 そう暮らし、そう死んだ」

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#03 王子の涙6/10

「今こうして死に、高いところに据えられたおかげで、街のあらゆる醜さと悲惨が見える。 心は鉛でできているのに、泣かずにはいられないのだ」

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#03 王子の涙7/10

「えっ、純金じゃないの?」とツバメは心の中で思った。 礼儀正しいので、個人的なことを声に出しては言わなかった。

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#03 王子の涙8/10

「遠くに」と像は低い美しい声で続けた。 「小さな通りに貧しい家がある。窓が開いていて、テーブルに座る女が見える。 顔はやつれ、手は荒れて赤く、針で刺した跡だらけだ。お針子なのだ」

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#03 王子の涙9/10

「女王の侍女のなかで一番美しい娘が次の舞踏会で着るサテンのドレスに、トケイソウの刺繡をしている。 部屋の隅のベッドには、幼い息子が病気で横たわっている」

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#03 王子の涙10/10

「熱があり、オレンジがほしいとねだっている。 母親は川の水しか与えるものがなく、男の子は泣いている。 ツバメよ、ツバメ、小さなツバメよ、私の剣の柄からルビーを抜いて届けてくれないか。足は台座に固定されて動けないのだ」

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#03 王子の涙

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#04 ルビーの使命
#04 ルビーの使命1/10

「エジプトで待たれているんだ」とツバメは言った。 「仲間たちはナイル川を行き来し、大きな蓮の花と語らっている。 もうすぐ偉大な王の墓で眠りにつくだろう」

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#04 ルビーの使命2/10

「王自身も彩色された棺に横たわっている。 黄色い麻布に包まれ、香料で防腐されている。首には淡い緑のヒスイの鎖があり、手は枯葉のようだ」

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#04 ルビーの使命3/10

「ツバメよ、ツバメ、小さなツバメよ」と王子は言った。 「一晩だけ残って、私の使いをしてくれないか。 男の子はとても喉が渇いて、母親はとても悲しんでいるのだ」

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#04 ルビーの使命4/10

「僕は男の子が好きじゃない」とツバメは答えた。 「去年の夏、川にいたとき、粉屋の息子の乱暴な二人組がいつも石を投げてきた。もちろん当たらなかったけどね。ツバメは飛ぶのが上手いし、僕は敏捷さで有名な家柄だ。それでも無礼なことだ」

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#04 ルビーの使命5/10

しかし幸福な王子があまりに悲しそうなので、小さなツバメは気の毒になった。 「ここはとても寒い」と彼は言った。「でも一晩だけ残って、あなたの使いをしよう」

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#04 ルビーの使命6/10

「ありがとう、小さなツバメ」と王子は言った。

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#04 ルビーの使命7/10

ツバメは王子の剣から大きなルビーをくわえ取り、くちばしにくわえて街の屋根の上を飛んでいった。

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#04 ルビーの使命8/10

大聖堂の塔を過ぎた。白い大理石の天使たちが彫られていた。 宮殿を過ぎると踊りの音が聞こえた。美しい娘が恋人とバルコニーに出てきた。 「なんて美しい星だ」と彼は娘に言った。「愛の力はなんて素晴らしいんだ!」

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#04 ルビーの使命9/10

「舞踏会にドレスが間に合うといいけど」と娘は答えた。 「トケイソウの刺繡を頼んだのに、お針子ときたら怠け者なの」

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#04 ルビーの使命10/10

ツバメは川を越えた。船のマストにかかる提灯が見えた。 ユダヤ人街を越えると、年老いた商人たちが値切り合い、銅の秤でお金を量っていた。

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#04 ルビーの使命

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#05 病の子へ
#05 病の子へ1/10

ようやく貧しい家にたどり着き、中をのぞいた。 男の子はベッドの上で熱にうなされ寝返りを打っていた。母親は疲れ果てて眠り込んでいた。

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#05 病の子へ2/10

ツバメはぴょんと中に入り、大きなルビーを女の指ぬきのそばに置いた。 そっとベッドの周りを飛び、翼で男の子のおでこを扇いだ。 「涼しくなった」と男の子は言った。「よくなってきたんだ」 そして心地よい眠りに落ちた。

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#05 病の子へ3/10

ツバメは幸福な王子のもとに戻り、したことを話した。 「おかしいな」と彼は言った。「こんなに寒いのに、すっかり温かい気がする」

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#05 病の子へ4/10

「それはよいことをしたからだよ」と王子は言った。 小さなツバメは考え始め、やがて眠ってしまった。考えごとをするといつも眠くなるのだ。

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#05 病の子へ5/10

夜が明けると川へ降りて水浴びをした。 「なんと注目すべき現象だ」と橋を渡りかけた鳥類学の教授が言った。「冬にツバメとは!」 教授は地元の新聞に長い投書をした。みんなそれを引用したが、難しい言葉だらけで誰も理解できなかった。

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#05 病の子へ6/10

「今夜こそエジプトへ行こう」とツバメは言い、その見通しに気分が高揚した。 街の記念碑をすべて巡り、教会の尖塔のてっぺんに長いこととまった。 どこへ行ってもスズメたちがさえずり、「なんて立派なよそ者だ!」と言い合うので、大いに楽しんだ。

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#05 病の子へ7/10

月が昇ると幸福な王子のもとに飛んで帰った。 「エジプトへの届け物はある?」と彼は叫んだ。「もう出発するんだ」

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#05 病の子へ8/10

「ツバメよ、ツバメ、小さなツバメよ」と王子は言った。 「もう一晩だけ残ってくれないか」

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#05 病の子へ9/10

「エジプトで待たれているんだ」とツバメは答えた。 「明日、仲間は第二カタラクトまで飛ぶ。カバが蒲の間に寝そべり、大きな花崗岩の玉座にメムノン神が座っている」

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#05 病の子へ10/10

「メムノンは一晩中星を見つめ、明けの明星が輝くとひと声歓びの叫びを上げ、やがて沈黙する。 昼になると黄色い獅子たちが水辺に降りてきて水を飲む。目は緑の緑柱石のようで、その咆哮は滝の轟きよりも大きい」

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#05 病の子へ

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#06 青年劇作家
#06 青年劇作家1/10

「ツバメよ、ツバメ、小さなツバメよ」と王子は言った。 「街の向こうに屋根裏部屋の若者が見える。紙だらけの机にかがみ込み、そばのコップには萎れたスミレが一束挿してある」

51/100
#06 青年劇作家2/10

「栗色の巻き毛に、ザクロのように赤い唇、大きな夢見がちな目をしている。 劇場の支配人のために戯曲を書き上げようとしているが、寒すぎてもう書けない。 暖炉に火はなく、空腹で気が遠くなっている」

52/100
#06 青年劇作家3/10

「もう一晩つきあうよ」と、本当は優しい心のツバメは言った。 「ルビーをもう一つ届けようか?」

53/100
#06 青年劇作家4/10

「ああ、もうルビーはない」と王子は言った。 「残っているのは目だけだ。千年前にインドから持ち帰られた珍しいサファイアでできている。 一つ抜いて彼に届けてくれ。宝石商に売れば、食べ物と薪を買い、戯曲を仕上げられるだろう」

54/100
#06 青年劇作家5/10

「王子さま」とツバメは言った。「そんなことはできない」 そして泣き始めた。

55/100
#06 青年劇作家6/10

「ツバメよ、ツバメ、小さなツバメよ」と王子は言った。 「私の言うとおりにしておくれ」

56/100
#06 青年劇作家7/10

ツバメは王子の目を抜き取り、青年の屋根裏部屋へ飛んでいった。 屋根に穴が空いていたので入るのは簡単だった。そこをさっとくぐり抜けて部屋に入った。

57/100
#06 青年劇作家8/10

青年は両手に顔をうずめていたので、鳥の羽ばたきに気づかなかった。 顔を上げると、萎れたスミレの上に美しいサファイアが載っていた。

58/100
#06 青年劇作家9/10

「ようやく認められてきたんだ」と彼は叫んだ。 「どこかの大ファンからの贈り物だ。これで戯曲を仕上げられる」 そして幸せそうな顔をした。

59/100
#06 青年劇作家10/10

翌日、ツバメは港へ飛んだ。大きな船のマストにとまり、水夫たちがロープで大きな箱を船倉から引き上げるのを眺めた。 「えいっ、ほいっ!」と箱が上がるたびに叫ぶ。 「僕はエジプトに行くんだ!」とツバメは叫んだが、誰も気にしなかった。月が昇ると王子のもとに戻った。

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#06 青年劇作家

10スナック

#07 マッチ売り
#07 マッチ売り1/10

「お別れを言いに来たんだ」と彼は叫んだ。

61/100
#07 マッチ売り2/10

「ツバメよ、ツバメ、小さなツバメよ」と王子は言った。 「もう一晩だけ残ってくれないか」

62/100
#07 マッチ売り3/10

「もう冬だ」とツバメは答えた。「じきに冷たい雪が降る。 エジプトでは太陽が緑のヤシの木を温め、ワニが泥の中に横たわり、のんびりと辺りを見回している」

63/100
#07 マッチ売り4/10

「仲間たちはバールベック神殿に巣を作り、桃色と白の鳩がそれを見てクークーと鳴き合っている。 王子さま、行かなくては。でもあなたを忘れません。来年の春、あなたがあげた宝石の代わりに美しい宝石を二つ持ってきます」

64/100
#07 マッチ売り5/10

「ルビーは赤いバラよりも赤く、サファイアは大海原のように青いものを」

65/100
#07 マッチ売り6/10

「下の広場に」と幸福な王子は言った。「小さなマッチ売りの少女がいる。マッチを溝に落として全部だめにしてしまった。 お金を持って帰らないと父親にぶたれる。泣いているのだ。靴も靴下もなく、小さな頭はむき出しだ」

66/100
#07 マッチ売り7/10

「もう片方の目を抜いて、あの子にやってくれ。そうすれば父親にぶたれずに済む」

67/100
#07 マッチ売り8/10

「もう一晩いよう」とツバメは言った。 「でも目を抜くことはできない。完全に見えなくなってしまう」

68/100
#07 マッチ売り9/10

「ツバメよ、ツバメ、小さなツバメよ」と王子は言った。 「私の言うとおりにしておくれ」

69/100
#07 マッチ売り10/10

ツバメは王子のもう片方の目を抜き取り、急降下した。 マッチ売りの少女のそばをさっと過ぎ、宝石を手のひらに滑り込ませた。 「なんてきれいなガラス玉」と少女は叫び、笑いながら家に走って帰った。

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#07 マッチ売り

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#08 異国の話
#08 異国の話1/10

ツバメは王子のもとに帰ってきた。 「もう目が見えないんだね」と彼は言った。「だからずっとそばにいるよ」

71/100
#08 異国の話2/10

「いや、小さなツバメよ」と哀れな王子は言った。「エジプトへ行かなければ」

72/100
#08 異国の話3/10

「ずっとそばにいるよ」とツバメは言い、王子の足もとで眠った。

73/100
#08 異国の話4/10

翌日ずっと王子の肩にとまり、異国で見たものの話をした。 ナイル川の岸に長い列をなして立ち、くちばしで金魚を捕る赤いトキのこと。 世界と同じくらい古く、砂漠に住み、すべてを知るスフィンクスのこと。

74/100
#08 異国の話5/10

ラクダのそばをゆっくり歩き、琥珀の数珠を手にした商人たちのこと。 黒檀のように黒く、大きな水晶を崇拝する月の山の王のこと。

75/100
#08 異国の話6/10

ヤシの木で眠り、二十人の神官が蜜菓子で養う大きな緑の蛇のこと。 大きな平たい葉に乗って湖を渡り、いつも蝶と戦っているピグミーたちのこと。

76/100
#08 異国の話7/10

「小さなツバメよ」と王子は言った。 「驚くべき話ばかりだ。しかし何よりも驚くべきは、人々の苦しみだ。悲惨ほど深い神秘はない。 街の上を飛んで、何が見えるか教えておくれ」

77/100
#08 異国の話8/10

ツバメは大きな街の上を飛んだ。 富める者が美しい邸宅で浮かれ騒ぐのを見た。門の前には物乞いたちが座っていた。 暗い路地に飛び込むと、飢えた子どもたちの青白い顔が暗い通りをぼんやり見つめていた。

78/100
#08 異国の話9/10

橋のアーチの下で、二人の小さな少年が暖を取ろうと抱き合って横たわっていた。 「お腹がすいたよ!」と二人は言った。 「ここに寝てはならん」と夜警が怒鳴り、二人は雨の中へさまよい出た。

79/100
#08 異国の話10/10

ツバメは戻り、見てきたことを王子に話した。

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#08 異国の話

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#09 金箔の施し
#09 金箔の施し1/10

「私は純金で覆われている」と王子は言った。 「一枚ずつ剝がして、貧しい人たちに配っておくれ。生きている者はいつも金で幸せになれると思っている」

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#09 金箔の施し2/10

ツバメは純金の葉を一枚また一枚と剝がし、幸福な王子はすっかりくすんだ灰色になった。 金箔を一枚一枚貧しい人々に届けると、子どもたちの顔は赤みを取り戻し、通りで笑いながら遊んだ。 「パンがある!」と子どもたちは叫んだ。

82/100
#09 金箔の施し3/10

やがて雪が降り、雪のあとに霜が来た。 通りは銀でできたかのように明るく輝き、家の軒から水晶の短剣のような長い氷柱が垂れ下がった。 みんな毛皮を着て出歩き、小さな男の子たちは赤い帽子をかぶって氷の上を滑った。

83/100
#09 金箔の施し4/10

哀れな小さなツバメはどんどん冷えていったが、王子のもとを離れようとしなかった。あまりに愛していたのだ。 パン屋が見ていない隙に戸口のパンくずを拾い、翼をばたつかせて体を温めようとした。

84/100
#09 金箔の施し5/10

しかしとうとう、自分が死ぬのだとわかった。 もう一度だけ王子の肩まで飛び上がる力がかろうじて残っていた。 「さようなら、王子さま!」と彼はささやいた。「手にキスさせてくれますか?」

85/100
#09 金箔の施し6/10

「やっとエジプトへ行くのだね、小さなツバメよ」と王子は言った。 「ここに長くいすぎた。でも唇にキスしておくれ。愛しているから」

86/100
#09 金箔の施し7/10

「僕が行くのはエジプトではない」とツバメは言った。 「死の家だ。死は眠りの兄弟でしょう?」

87/100
#09 金箔の施し8/10

ツバメは幸福な王子の唇にキスをし、その足もとに落ちて息絶えた。

88/100
#09 金箔の施し9/10

そのとき、像の内側で奇妙なひび割れる音がした。何かが壊れたかのように。 実は鉛の心臓が真っ二つに割れたのだ。 たしかに、恐ろしいほどの大霜であった。

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#09 金箔の施し10/10

翌朝早く、市長が市会議員たちと下の広場を歩いていた。 円柱のそばを通りかかると像を見上げて言った。 「おやまあ、幸福な王子のなんとみすぼらしいこと!」

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#09 金箔の施し

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#10 二つの宝物
#10 二つの宝物1/10

「まったくみすぼらしい!」と、いつも市長に同調する市会議員たちが叫び、近くまで見に行った。

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#10 二つの宝物2/10

「剣からルビーは落ち、目もなくなり、もう金色でもない」と市長は言った。 「乞食同然ではないか!」

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#10 二つの宝物3/10

「乞食同然だ」と市会議員たちは言った。

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#10 二つの宝物4/10

「おまけに足もとに死んだ鳥がいるぞ!」と市長は続けた。 「鳥がここで死ぬことを禁止する布告を出さねば」 市の書記がその提案を書き留めた。

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#10 二つの宝物5/10

こうして幸福な王子の像は引き倒された。 「美しくなくなった以上、もう役に立たない」と大学の芸術学教授は言った。

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#10 二つの宝物6/10

像は溶鉱炉で溶かされ、市長は金属の使い道を決める会議を開いた。 「もちろん新しい像を作らねば」と市長は言った。「それは私の像にしよう」

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#10 二つの宝物7/10

「私の像にしよう」と市会議員たちはそれぞれ言い、口論になった。 最後に聞いた話では、まだ口論を続けていた。

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#10 二つの宝物8/10

「おかしなことだ!」と鋳造所の職工長が言った。 「この割れた鉛の心臓が溶鉱炉で溶けない。捨てるしかないな」 こうして心臓はゴミ捨て場に投げ捨てられた。死んだツバメもそこに横たわっていた。

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#10 二つの宝物9/10

「この街で最も尊いものを二つ持ってきなさい」と神が天使のひとりに言った。 天使は鉛の心臓と死んだ鳥を持ってきた。

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#10 二つの宝物10/10

「正しく選んだ」と神は言った。 「この小さな鳥は天国の庭で永遠に歌い、幸福な王子は黄金の都で永遠に私を讃えるだろう」

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