清少納言

枕草子

✦ スナック編集版

清少納言 · 0/97

🍿 Snack Point

千年前のエッセイが、こんなに「わかる」なんて。清少納言の鋭い観察眼と率直な言葉が、時代を超えてあなたの心に刺さる。(冒頭10スナックはやさしい現代語訳つき)

登場人物

清少納言作者。一条天皇の中宮・定子に仕える女房。鋭い感性と機知に富んだ宮廷随筆家
中宮定子清少納言が仕えた一条天皇の后。聡明で華やかな人物
現代語訳つき
第一章 春は
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第一段 春は第一章 春は

季節のいい瞬間

春は明け方がいい。だんだん白くなっていく山の空が少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいているのがいい。 夏は夜。月が出ている夜は言うまでもない。暗い夜も、蛍がたくさん飛び交っているのがいい。一つ二つほのかに光って飛んでいくのもいい。雨が降るのもいい。 秋は夕暮れ。夕日がさして山の端がとても近く見えるとき、カラスがねぐらへ帰っていくのがいい。

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第一段 まいて雁などの列…第一章 春は

冬の朝の炭火が最高

まして雁が列をなして飛んでいるのが小さく見えるのは、とてもいい。日が完全に沈んで、風の音や虫の声が聞こえてくるのは、もう言葉にならない。 冬は早朝。雪が降っているのは言うまでもない。霜が白いのも、そうでなくても、とても寒い朝に急いで火をおこして、炭を持って歩くのが似合っている。昼になってだんだん暖かくなると、火鉢の火も白い灰ばかりになって、よくない。

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第二段 ころは第一章 春は

好きな月ランキング

好きな時期は、一月・三月、四月・五月、七・八・九月、十一・十二月。つまり全部。季節ごとに、一年中いい。 一月。元日は特別。空もうららかで珍しく霞がかかっていて、みんなが着飾って新年を祝っている様子が特にいい。七日は若菜を摘む日。

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第二段 白馬見にとて第一章 春は

白馬の節会を見に行く

白馬を見ようと、町の人たちはきれいに車を仕立てて見に行く。門を通り抜けるとき、みんなの頭がぶつかりあって、飾りの櫛も落ちたりして笑うのも、またいい。門のところに殿上人がたくさん立っていて、馬を驚かして笑っているのが見える。

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第二段 「いかばかりなる人、九…」第一章 春は

宮中デビューの現実

「どんな人が宮中に慣れているのだろう」と想像していたけれど、実際に宮中で見ると狭くて、馬を扱う人の顔は服もはだけていて、本当に黒い。白粉がついていないところは、雪がまだらに残っているみたいで見苦しい。馬が暴れるのも怖くて、引っ込んでしまってよく見えない。

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第二段 十五日第一章 春は

正月の粥杖バトル

十五日。お粥を供えて、粥杖を隠して、家の人や女房たちが「叩かれまい」と後ろを気にしている様子がおかしい。うまく叩けたときはすごく盛り上がって、みんな笑っている。「やられた!」

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第二段 と思ひたるも第一章 春は

のぞき見する女房たち

と悔しがるのも当然。新しく通ってくる婿の君が宮中へ出かけていくのを待ちきれなくて、「私が」と思っている女房がのぞいたり気取ったり、奥のほうに立っているのを、前にいる人はわかっていて笑う。「静かに!」

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第二段 とまねき制すれども第一章 春は

叩いて逃げる恋の攻防

と手招きして止めるけれど、女のほうは知らん顔でおっとりと座っている。「ここにあるものを取ります」と言い寄って、走って叩いて逃げると、みんな笑う。男のほうも嫌がらずに微笑んでいるのに、特に驚かず、顔が少し赤くなっているのがいい。

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第二段 内裏わたりなどの第一章 春は

除目の季節の悲喜こもごも

宮中あたりの高貴な方々も、今日はみな乱れて堅苦しさがない。人事の時期は宮中がとてもおもしろい。雪が降ってひどく凍った日に、辞令の申請書を持って歩く四位・五位の人で、若くて元気そうなのは頼もしい。年をとって白髪の人が、人に取り次ぎを頼んだり、女房のところに寄って自分の賢さを力説しているのは…

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第二段 「よきに奏し給へ…」第一章 春は

叶った人と叶わなかった人

「よろしくお願いします」と頼んで、うまくいった人はとてもいい。叶わなかった人は、本当にかわいそう。 三月三日。のどかに晴れている。桃の花が咲き始めるころ。柳もいいのは当然。まだ芽がこもっているのがいい。広がりきったのはちょっと…。きれいに咲いた桜を長く折って。

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第二章 桜の直衣に出だし
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第二段 桜の直衣に出だし…第二章 桜の直衣に出だし

その涼しげな白、ずるい

桜色の直衣から袿をちらりとのぞかせて、お客さまでも、お兄様たちでも、すぐそばに座って、気軽に話しかけてくれている様子って、なんともおしゃれで素敵だわ。 四月。葵祭りのころって、ほんとうに趣があっていいわね。高貴な方々も殿上人も、上に着ている衣の色が濃いか薄いかくらいの違いしかなくて、白い袿はみんな同じ感じで、涼しそうでおしゃれなのよ。

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第二段 木々の木の葉第二章 桜の直衣に出だし

空耳ほととぎす、最高

木々の葉っぱが、まだそんなにこんもり茂っているわけでもなく、若々しく青々と広がっているところに、霞も霧もかかっていない空のようすが、なんとなく自然とすてきだなあと感じられる中で、少し曇った夕方や夜などに、ひそやかなほととぎすの声が、遠くから「空耳かな?」と思うくらい、かすかに聞こえてきたとしたら、どんな気持ちになるでしょう。 お祭り(葵祭)が近くなってきて、青朽葉色や二藍色の着物などをくるくると巻いて、紙などにちょこっとだけ包んで、あちこち行き来しながら持ち歩いているようすは、本当におしゃれでいいなあと思う。

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第二段 末濃・むら濃なども第二章 桜の直衣に出だし

ボロ服の子が一番かわいい説

薄紫のグラデーションや、濃淡のある紫の着物なども、普段よりも若々しく見える。 子どもの女の子が、髪だけはきれいに洗ってととのえているのに、着ている服はあちこちほころびてボロボロになっているような子が、下駄や靴などを持ってきて「鼻緒をつけてください」「裏を貼ってください」などとあちこちバタバタ騒ぎまわって、早くその(お祭りの)日にならないかなあと、うきうきしながら歩き回っているのも、なんともかわいらしい。 普段はぱっとしない感じで踊り歩いているような人たちも、きちんと装束を着飾ってしまうと、とても立派な「定者(じょうざ)」

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第二段 などいふ法師のやうに第二章 桜の直衣に出だし

青い衣、脱がさないで!

…などと言う法師のように、練り歩いてさまよっている。どんなに心細いことだろう、それぞれの身分に合わせて、母や叔母の女性・姉などが、付き添い、身だしなみを整えてあげて、連れて歩くのも、趣がある。 蔵人になることを強く望んでいた人で、すんなりとはなれなかった人が、その日(叙位の日)に青色の衣を着ているのは、そのままずっと脱がせないでいてあげたいなあ、と思われる。綾織りでないものは、よくない。

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第三段 異事なるもの第二章 桜の直衣に出だし

その一言、余計です!

なんか違うな〜と思うもの。 お坊さんの話し方。男の人と女の人の話し方。身分の低い人の話し方には、必ず、余計な一言がついてたり、やりすぎな感じがしたりするよね。

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第四段 思はむ子を法師に…第二章 桜の直衣に出だし

お坊さんって大変すぎ!

かわいいと思っているわが子を法師(お坊さん)にしてしまうのは、本当に気の毒なことだわ。ただ、木切れか何かのように(どうでもいいものとして)扱われているのも、見ていてとても可哀想。 まずい精進料理をもぐもぐ食べて、眠ってしまうのも、若いお坊さんなら気になることもあるでしょうに——女の人がいるところをのぞいてみたいとか——そういうのをまるで罪でもあるかのように避けているのに、それでも文句を言われてしまう。 ましてや、祈祷師(お祈りをする偉いお坊さん)なんてもっと大変そう。疲れてうとうとしてしまうと、「寝てばかりいて」と責められる——

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第四段 など第二章 桜の直衣に出だし

昔は大変だったのよ!

などと、非難される。本当に居心地が悪くて、どんなに肩身が狭い思いをしているだろう。 これは、昔のことのようだ。今は、とても気楽そうである。

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第五段 大進生昌が家に第二章 桜の直衣に出だし

門が小さいって聞いてない!

大進の生昌さんの家に、宮様がお出ましになるというので、東の門は四本柱の立派な門にして、そこからお輿を入れることになった。 北の門からは、女房たちの牛車を入れようと思っていた。まだ警備の人たちも並んでいないから、さっさと入れるだろうと思って、髪の毛の乱れた人も、あんまりきちんと整えもせずに、門に車を寄せてそのまま降りればいいや、と気楽に考えていたのに……。 檳榔毛の立派な牛車なんかは、門が小さすぎて、つかえてどうしても入れないのだ。 しょうがないから、いつものように筵(ござ)を道に敷いて、そこから降りることになって、もう本当に腹が立つし情けないったらないけれど、どうしようもない。

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第五段 殿上人第二章 桜の直衣に出だし

見られた!もう笑うしかない

殿上人も、そうでない身分の人も、衛門の陣のところに立って見物しているのが、ほんとうに悔しい。 お上の御前に参上して、さっきのことを申し上げると、「ここでも、人が見ないはずがあるでしょうか。どうして、あんなにくつろいだ様子を見せてしまったのですか」と、笑われた。「でも、あの方々は見慣れているので。もし本当に立派に着飾っていたとしたら、驚く人もいたかもしれませんけれど。それにしても、これほどの家に、車が入れない門なんてあるはずがないでしょう。もし見られたなら、笑い者になってしまいますよ」

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第五段 などいふ程にしも第二章 桜の直衣に出だし

門が狭いのよ問題

などと話しているちょうどそのとき、「これをどうぞ差し上げてください」と言って、硯(すずり)などを差し入れてくる。「まあ、ほんとうにひどいお屋敷ですこと。どうしてあの門を、そんなに狭く造ってお住まいなのですか」と言うと、相手は笑って、「家の広さも、身分相応にしているのですよ」と答える。「でも、門だけは高く立派に造る人などではいらっしゃらないなら、そんなことは知りようもなかったでしょう。たまたまこの道に迷い込んでしまったおかげで、こうして少しはわかることができたというものです」

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第三章 といふ
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第五段 といふ第三章 といふ

生昌、ビビりすぎでしょ

と言う。「その神楽の腕前も、たいしたことないみたいね。筵の道を敷いておいたのに、みんな落っこちてドタバタしてたじゃない」と言うと、「雨が降っておりましたので、そうなってしまったのでございましょう。まあまあ、よいことです。また何か仰せつかることがあるといけませんので、これで失礼いたします」と言って、帰っていった。「いったい何があったの?生昌がものすごく怖がってたわよね」

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第五段 と、問はせ給ふ第三章 といふ

鍵もかけずに寝るな!

と、お尋ねになります。「いいえ、そうではございません。牛車が入れなかったことを申し上げておりました」と答えて、車から降りました。 同じ部屋に住む若い女房たちは、何も事情を知らず、眠たかったので、みんな寝てしまっています。東の対の屋、西の廂の間、北の方にかけて部屋があるのですが、北の障子には鍵もかかっていなかったのを、それも確かめもせずに、その家の主人なので、勝手知ったる我が家とばかりに、開けてしまったのです。なんともしわがれた、ざわざわと騒がしい声で、「ごめんくださーい、どなたかいらっしゃいますかー、ごめんくださーい、どなたかいらっしゃいますかー」

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第五段 と、あまたたびい…第三章 といふ

ちょっと、バレてますよ?

と、何度も呼ぶ声に、はっと目が覚めて見てみると、几帳(薄いカーテンのような仕切り)の後ろに立てかけてある燭台の明かりが、丸見えになっている。障子を五寸(約15センチ)ほど開けて、そこから声をかけているのだった。なんともおかしくて、おもしろい。 ふだんはぜったいに、こんな色っぽいことなんてしない人なのに、私の家にいらっしゃるからといって、すっかり自分の気持ちのままに動いているんだわ、と思うと、これまたおかしくてたまらない。 隣に寝ていた人を揺り起こして、「ねえ、見て見て。あんな、こっそり隠れてる人がいるみたいよ」

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第五段 といへば第三章 といふ

丸見えなのに押しかけてくる図々しさよ

そう言うと、男は頭をもたげてこちらを見やって、とても笑う。「あれは誰だ。丸見えじゃないか」と言うと、「いいえ、家の主人と、決めていただきたいことがございまして」と言うので、「門のことをお伝えしたのですよ、障子を開けてくれとお願いしたでしょうか(そんなことは言っていません)」と言うと、「それでも、その件もお話ししたいのです。あなたのそばにいさせてもらえませんか。あなたのそばにいさせてもらえませんか」

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第五段 といへば第三章 といふ

ズカズカ入ればいいじゃん

そう言うと、「それはとても見苦しいことですよ」「絶対にいらっしゃれないでしょう」なんて言って笑っているようなので、「若い人がいらっしゃったのね」と言って、(その人を)引っ張っていって、行ってしまった後に、もう笑いが止まらなくて、「入ろうと思うなら、そのままズカズカ入ってくればいいじゃない。取り次ぎを頼むのに、『都合がいい』なんて言う人がどこにいるっていうの」

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第五段 と、げにぞをかしき第三章 といふ

姫宮には中くらいがちょうどいい

と、本当になんとも趣深いことだ。 翌朝早く、中宮様のもとに参上して昨夜のことをご報告すると、「そんなこと(宣旨が来ることなど)知らせてもらっていなかったわ。昨夜のお祝いに感激して行ったのね。まあ。あの子をきつく言ってしまったのが、かわいそうだったわね」とおっしゃって、笑われる。 姫宮のお世話には、「どんな色のものをご用意すればよいでしょう」と申し上げると、また笑われるのも当然のことだ。「姫宮のおそばに置くものは、普通のやり方では見苦しく見えてしまうでしょう。中くらいの折敷に、中くらいの高杯などがよいでしょうね」

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第五段 と申すを第三章 といふ

笑っちゃダメ!な真面目さん

と申し上げると、「それならば、上っ張りを羽織っただけの子どもでも、参上しやすいでしょうに」と言うのを、「それでも、普通の人みたいに、この人のことをあれこれ言って笑ったりしないで。とても真面目で誠実な人なのだから」と、かわいそうに思っていらっしゃるのもおもしろい。 ちょうど中間の休憩の折に、「大進が、まず少しお話ししたいことがある、と申しております」

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第五段 といふを聞こしめして第三章 といふ

また笑われたいの?

と(誰かが)言うのをお聞きになって、「また、なんてことを言って、笑われようとしているのだろう」とおっしゃるのも、またおもしろい。「行って聞いてきなさい」とおっしゃるので、わざわざ外に出てみると、「先日の門のことを、中納言さまにお話ししましたところ、たいそう感動なさって、なんとか、ちょうどいい機会に、ゆっくりとお会いして、直接お話をうかがいたいとおっしゃっていました」

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第五段 とて第三章 といふ

え、それだけ?な展開

それだけで、他には何もない。「昨夜のことを話してくれるかな」と、胸がどきどきしたけれど、「では、あとでゆっくりお部屋にお伺いします」と言って帰ってしまった。戻ってお仕えしたら、「それで、何だったの?」とおっしゃるので、申し上げたことを「こういうことでした」とお伝えすると、「わざわざ使いを出して呼び出すようなことでもないでしょう。自然と、廊下の端やお部屋にいるときに、気軽に言えばいいじゃない」

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第五段 とて第三章 といふ

褒められて素直になれない

そう言って笑うと、「自分が賢いと思っている人に褒められて、うれしいだろうと思って、わざわざ知らせてあげているのだよ」とおっしゃる様子も、本当に素晴らしい。

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第四章 上にさぶらふ御猫
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第六段 上にさぶらふ御猫は第四章 上にさぶらふ御猫

猫さま、日向ぼっこ中につき

宮中に仕えている御猫は、位のある名前をいただいていて、「命婦のおとど」と呼ばれ、とても愛らしいので、大切に育てられていました。その猫が縁側に出てごろんと寝そべっているところに、乳母の馬の命婦が「まあ、いけませんよ。中にお入りくださいな」と呼びかけます。日差しがぽかぽかと差し込む中で気持ちよさそうに眠っている猫を驚かせようとして、「翁丸はどこ?命婦のおとどを食べておしまい!」と声をかけたのです。

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第六段 といふに第四章 上にさぶらふ御猫

帝もドン引き!翁丸事件

「(本当に翁丸か)」と言うと、本当のことだと思ったのか、翁丸はパッと走り寄ってきた。するとその人たちはびっくり仰天して、御簾の中へ逃げ込んでしまった。 朝のお食事の間に、帝がいらっしゃって、その様子をご覧になり、たいそう驚かれた。帝は猫をご自分の懐に入れて、男性たちをお呼びになると、蔵人の忠隆となりなかが参上した。帝は「この翁丸をこらしめて、犬島へ追いやれ。今すぐに」とおっしゃった。

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第六段 と仰せらるれば第四章 上にさぶらふ御猫

犬よ、あの春の日を覚えてる?

とおっしゃるので、みんなが集まってわいわい探し回る。馬の命婦まで叱られて、「乳母を替えてしまおう。まったく目が離せない」とおっしゃるので、(命婦は)御前にも出られない。犬は探し出されて、滝口の者たちに命じて追い払ってしまった。「ああ、かわいそうに。あんなにうれしそうにひょこひょこ歩き回っていたのに」「三月三日に、頭弁が、柳で冠を作ってかぶせ、桃の花を髪飾りのように挿して、桜を腰に差したりして、得意そうに歩かせていたあの時、まさかこんな目に遭うとは思ってもいなかっただろうに」

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第六段 など第四章 上にさぶらふ御猫

帰ってきたら打たれた犬

などと、しみじみと話している。「お食事のときは、必ずそばに控えているのに、今はひっそりと寂しいことです」などと言っていると、三、四日がたったお昼ごろ、犬がひどく鳴く声がするので、いったいどの犬がこんなに長く鳴いているのだろうと聞いていると、あちこちの犬たちが、様子を見に行ってしまった。 お手洗いの世話をする女房が走ってきて、「たいへん!犬を蔵人が二人がかりで打っているんです。死んでしまいそう。犬を島流しにされたのに、勝手に戻ってきたというので、こらしめているんですって」

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第六段 といふ第四章 上にさぶらふ御猫

え、これ翁丸じゃん…!

と言う。なんてひどいことだろう。翁丸だったのだ。「忠隆・実房などが打った」と言うので、止めに行かせている間に、やっとのことで鳴きやみ、「死んでしまったので、陣の外に引き捨てた」と言うので、みんながかわいそうだと話している夕方ごろ、ひどく腫れあがって、見るもあわれな犬が、みすぼらしい様子でぶるぶると震えながらやってきたので、「翁丸か?最近、こんな犬がうろうろしているの?」

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第六段 といふに第四章 上にさぶらふ御猫

翁丸、返事くらいしなよ

と言うのに、「翁丸」と呼んでも、まったく聞く耳を持たない。 「それだ」とも言い、「違う」とも、みんなが口々に言うので、「右近は見知っているはず。呼んでこい」とおっしゃって召し出すと、やって来た。 「これは翁丸か」と、見せなさる。 「似てはおりますが、これはなんとも不吉な様子に見えます。それに、翁丸かと声をかけるだけで、喜んで飛んでくるものなのに、呼んでも近寄ってこない。別の犬のようです。あの翁丸は、打ち殺して捨ててしまったと申しておりました。二人がかりで打ったのでは、もう死んでしまっているでしょう」

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第六段 など申せば第四章 上にさぶらふ御猫

帝、犬を想ってしんみり

などと申し上げると、帝はとても心苦しそうにされる。  暗くなってから、食べ物をお出ししたけれど、召し上がらないので、別のことにして話をうやむやにして終わってしまった。その翌朝、髪をとかしたり、お手水をお持ちしたりして、帝に鏡をお持ちさせになってご覧になっていると、ちょうど、犬が柱の根元に座っているのをふと見やって、「ああ、かわいそうに。昨日は翁丸をひどく打ってしまったなあ。死んでしまったのだろうか、それが気の毒でならない。次はどんな姿に生まれ変わったのだろう。どれほどつらい思いをしたことだろう」

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第六段 とうちいふに第四章 上にさぶらふ御猫

犬が泣いた!嘘でしょ

「翁丸!」と呼びかけると、そこに座っていた犬がぶるぶると震えて、涙をただただぽろぽろと落とすのを見て、ほんとうにあきれてしまった。「そうか、やっぱり翁丸だったんだ。昨夜はこっそり隠れていたのね」と、かわいそうに思う気持ちとおかしさが一緒になって、もうたまらないくらい笑えてきた。お鏡を置いて、「ねえ、翁丸なの?」

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第六段 といふに第四章 上にさぶらふ御猫

犬にも心があるんかい!

というと、(翁丸は)ひれ伏して、ひどく泣き叫ぶ。御前(中宮様)も、とても声を上げて笑っていらっしゃる。右近内侍をお呼びになって、「こういうことがあってね」とおっしゃると、(右近内侍が)笑いさわいでいるのを、天皇様もお聞きになって、こちらへいらっしゃった。「おどろいた。犬でも、こんな(人の言葉がわかる)心があるものなんだねえ」

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第六段 と、笑はせ給ふ第四章 上にさぶらふ御猫

バレた!腫れ顔の大失態

と、(帝が)笑っていらっしゃる。天皇のそばにお仕えする女房たちも聞いて、集まってきて呼ぶのに、今になってやっと起き上がって動き出した。「やっぱり、この顔なんかが腫れたものを、(誰かに)手当てさせたいわ」と言うと、「とうとうこのことを言って、バレてしまったじゃないの」などと笑っているところに、忠隆が聞いて、台盤所(食事などをする部屋)の方から、「もしかして里帰り中でしょうか。あちらで見てあげましょう」

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第五章 といひたれば
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第六段 といひたれば第五章 といひたれば

震えて泣くのもアリでしょ

そう言ったところ、「まあ、なんてこと。そんなものは絶対にいません」と返事をさせると、「それでも、見つける時があるでしょう。そうそう隠しておくこともできますまい」と言う。 そうして、謹慎が許されて、もとの通りになった。それでも、かわいそうがられて、震えながら泣き出したのは、この世のものとは思えないほどおかしくて、また切なくもあった。人間だって、誰かに言われて泣いたりするものだけれど。

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第七段 正月一日第五章 といひたれば

五節句の空、全部チェックしてみた

正月一日と三月三日は、とても晴れやかで明るい日だ。五月五日は、一日中曇っている。七月七日は、昼間は曇っていて、夕方になると晴れた空に、月がとても明るく輝き、たくさんの星が見えている。九月九日は、夜明け前から雨が少し降って、菊の花の露もたっぷりと溜まり、花の上にかぶせてあった綿もすっかり濡れて、花の香りがしみついてなんとも趣がある。早朝には雨は止んだけれど、それでも空は曇ったまま、少し風が吹けばまた降り出しそうに見えるのも、なんとも風情があっていいものだ。

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第八段 慶び奏するこそ第五章 といひたれば

後ろで大騒ぎしてる件

慶びを奏上する(おめでたいことを天皇に申し上げる)場面って、なんともおもしろいわよね。後ろを(後ろに控える人に)任せて、御前(天皇のいらっしゃる方向)に向かって立っているのに、(後ろの人たちは)お辞儀したり、地面に額をつけて拝んだり、大騒ぎしちゃって。

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第九段 内裏の東をば第五章 といひたれば

枝扇、持てばよかったのに

宮中の東の方を、北の陣という。そこに梨の木がはるか高くそびえていて、「いったい何尋(ひろ)あるのだろう」などと話していた。権中将が、「根元からばっさり切って、定澄僧都(じょうちょうそうず)の枝扇にしてしまいたいものだ」とおっしゃっていたのだけれど、その定澄僧都が山階寺(やましなでら)の別当になって、お祝いのご挨拶に参上した日のこと。近衛司(このえづかさ)としてこの権中将様が出ていらっしゃったのだが、高い雅沓(けいし)まで履いていらっしゃるので、もうとんでもなく背が高い。退出されたあとに、「なぜ、あの枝扇をお持ちにならなかったのかしら」とひとこと言ってやった。

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第九段 と言へば第五章 といひたれば

笑える言葉センス!

と言うと、「物忘れしない人ね」と、笑っていらっしゃる。「定澄僧都には袿(うちき)がない。すくせ君には衵(あこめ)がない」と言ったという人は、なんともおかしくて素敵だわ。

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第十段 山は  小倉山第五章 といひたれば

山の名前って、なんかドラマある

山は  小倉山。三笠山。このくれ山。わすれ山。いりたち山。鹿背山。ひはの山。かたさり山は、いったい誰のことを気にして(その名をつけた)のかしら、と思うとおもしろい。五幡山。後瀬山。笠取山。ひらの山。鳥籠の山は、「わたしの名前を漏らすなよ」と、天皇が詠まれたという歌があるが、それがとても趣深くておもしろい。 伊吹山。朝倉山は、遠くから眺めるのがとても風情があっていい。岩田山。大比禮山もいい感じ、臨時の祭りの使いのことなどが自然と思い出されてくる。

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第十段 手向山第五章 といひたれば

山の名前、好きすぎる件

手向山。三輪の山、なんともいい感じ。音羽山。待兼山。玉坂山。耳無山。末の松山。葛城山。美濃の御山。柞山。位山。吉備の中山。嵐山。更級山。姨捨山。小塩山。浅間山。かたため山。かへる山。妹背山。

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第十一段 市は  辰(たつ…第五章 といひたれば

観音様のご縁、感じます

市といえば、辰の市がいい。椿市は、大和にたくさんある市の中でも、長谷寺にお参りする人が必ずそこに立ち寄ったというから、観音様のご縁があるのかしら、と何か特別な感じがする。おふさの市。餝摩の市。飛鳥の市。

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第十二段 峯は第五章 といひたれば

峰といえばここでしょ!

峰といえば、ゆずるはの峰。阿弥陀の峰。弥高の峰。

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第十三段 原は竹原第五章 といひたれば

原といえばコレでしょ!

「原」といえば、竹原。甕の原。朝の原。その原。萩原。粟津原。奈志原。うなゐごが原。安倍の原。篠原。

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第六章 淵は  かしこ淵
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第十四段 淵は  かしこ淵第六章 淵は  かしこ淵

淵の名前、センスよすぎ問題

淵といえば、 「かしこ淵」——いったいどんな底の深い心があって、そんな名前をつけたのだろう、と思うとおもしろい。 「ないりその淵」——誰が、どんな人が教えたのだろう、その名前。 「青色の淵」もまたおもしろい。蔵人(宮中に仕える役人)なんかが身につけるのにぴったりな青色ね。 「いな淵」。 「かくれの淵」。 「のぞきの淵」。 「玉淵」。

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第十五段 峰は第六章 淵は  かしこ淵

峰よ、どこまで高いの

峰といえば、ゆづるはの峰。阿弥陀の峰。いやたかの峰。

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第十六段 :陵は第六章 淵は  かしこ淵

陵もやっぱり選ぶわよ

陵(みささぎ)といえば、 うぐいすの陵。柏原の陵。あめの陵。

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第十七段 :渡は第六章 淵は  かしこ淵

渡し場、ここが好き!

渡し場といえば、 菅の渡し。水橋の渡し。こりずまの渡し。

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第二十段 清涼殿のうしとら…第六章 淵は  かしこ淵

え、天皇の部屋に妖怪いるの!?

清涼殿の北東の角にある仕切りの御障子には、荒れた海の絵と、生き物たちの恐ろしそうな姿、そして手長・足長という妖怪が描かれているのよ。

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第二十段 うへの御局の戸第六章 淵は  かしこ淵

桜より映える人がいる件

女御様のお部屋の戸が開けっ放しになっていて、いつも丸見えなので、「もう、またですか」なんてぶつぶつ言いながら笑っていたところに、 欄干のそばに、青い大きな瓶を置いて、桜のとても見事な枝を、長さ五尺(約1.5メートル)ほどのものをたくさん活けてあって、欄干のそばまでこぼれるように咲き広がっていた。そこへ、お昼ごろに、大納言殿が、桜色の直衣(のうし)をやわらかくふんわりと着こなして、濃い紫の指貫(はかま)をはき、白いお召し物を重ねて、その上に濃い色の綾織りの、とても鮮やかなものを外に出すようにして参上なさった。

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第二十段 うへのこなたにお…第六章 淵は  かしこ淵

春の昼、帝がそっと移動した

天皇が、こちらの部屋においでになるので、戸口の前にある細い廊下にお座りになって、何かご報告申し上げていらっしゃる。 御簾の中では、女房たちが桜色の唐衣をゆったりとくつろいで脱ぎかけながら、藤色や山吹色など、色とりどりの衣がいかにも華やかで、たくさんの小さな半蔀の御簾からはみ出しているようすは、ほんとうに美しい。 昼御座のほうにお食事が運ばれてくる。足音が高らかに響いて、「おし、おし」という声が聞こえてくる。 うらうらとのんびりした春の日の景色がとても趣深いところに、最後のお膳を持った蔵人が参上して「お食事の用意ができました」と申し上げると、天皇は中の戸からお渡りになった。

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第二十段 御供に大納言參ら…第六章 淵は  かしこ淵

千年いてほしい人がいる

お供として大納言様もいらっしゃって、さっきの花のそばにまた戻っておすわりになっている。宮の御前では御帳台をそっと押しのけて、長押のそばにお出ましになっていたりと、もうどれをとっても何もかもがすばらしくて、そこにいるお仕えする人たちも、何も心配ごとなんてないような気分になってしまうほど。 そんな中、「月も日もかわりゆけども ひさにふる みむろの山の」という古い歌を、ゆったりとのびやかに口ずさみながらおすわりになっているのが、もう本当になんてすてきなんだろうと思われる。 ほんとうに、千年でも生きていてほしいくらいの、そんなおすがたなのだった。

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第二十段 陪膳つかうまつる人の第六章 淵は  かしこ淵

帝がそこにいるのに墨なんてすれない!

お食事の世話をしている人が、男の召使いたちを呼ぶ間もないくらいすぐに(帝が)いらっしゃいました。「硯の墨をすりなさい」とおっしゃるのですが、私は目が宙を泳いでしまって、ただひたすら帝のことばかり見つめてしまうので、近くにあるものも遠くに見えてしまいそうなくらいです。(帝は)白い色紙をきちんと折って、「これに、今ぱっと思い浮かんだ故事(昔の話や詩)を、一つずつ書きなさい」(とおっしゃいました)

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第二十段 と仰せらるる第六章 淵は  かしこ淵

顔まで赤くなっちゃった

そうおっしゃる。外にいらっしゃる方に、「これはどういうことですか」と申し上げると、「早く書いて差し上げてください、男の人がそばについていてくれるわけでもないのだから」とおっしゃって、硯を取り降ろして、「早く早く、あれこれ深く考えないで、『難波津』でも何でも、ぱっと浮かんだことを書けばいいのです」と急かされるので、どうしてあんなにあがってしまったのだろう、もう顔まで赤くなってしまって、頭の中がぐるぐるするばかり。

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第七章 春の歌
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第二十段 春の歌第七章 春の歌

帝も唸った!一文字替えの技

春の歌や花の心情などについて、そういうことを話し合っていたときに、身分の高い女房たちが二、三首書いて、「これに続けて書いてください」と言ってきた。 そこにある歌、 「年が経つにつれて歳はとってしまった。でも花を見ていると、何も悩みなんてなくなってしまう」 という歌の「花をし見れば」という部分を、「君をし見れば(あなたを見ていると)」と書き換えたものを、帝がご覧になって、「ただこういう気の利いたセンスこそが、ずっと気になっていたんだよ」とおっしゃった。

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第二十段 と仰せらる第七章 春の歌

で、ついでに何なの?

とおっしゃる。そのついでに、

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第二十段 「圓融院の御時、御前に…」第七章 春の歌

字が下手でもええやん!

円融院(えんゆういん)がご在位だったころ、天皇のおそばで、「紙に歌を一首書きなさい」と殿上人たちにおっしゃったのだけど、みんなとても書きづらそうで、「いえいえ、とんでもない」と断る人たちがいたの。 そこで天皇が「字がうまいかへたか、歌が場に合っているかどうかなんて、気にしなくていいよ」とおっしゃったので、しぶしぶみんな書いたんだけど、その中で、今の関白殿が、まだ三位の中将と呼ばれていたころ、 「しほのみついづもの浦のいつもいつも 君をばふかくおもふはやわが」 という歌の最後の部分を、「たのむはやわが」と書かれたのを、天皇はこのうえなく素晴らしいとほめたたえられたんですって。

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第二十段 と仰せらるるも第七章 春の歌

冷や汗!歌テストの恐怖

そうおっしゃられるのも、なんとなく冷や汗が出てくる気持ちがしたものだ。若い人だったら、とてもそんなふうには書けないような内容だろうなと思われる。いつもとても上手に書く人でも、なんとなくみんな遠慮してしまって、書き損じたりしているものもある。 古今集の冊子を御前にお置きになって、歌の上の句をおっしゃっては、「この続きはどうなっていたかしら」

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第二十段 と仰せらるるに第七章 春の歌

覚えてないのは罪ですか

とおっしゃるので、一晩中・昼中ずっと頭から離れなくて、思い出せるものもある。でも本当によく覚えていなくて、答えられないことって、いったいどういうこと?宰相の君でさえ十首くらい。それだって全部覚えているかといったら……。まして五つ六つくらいしか答えられないのは、「覚えていません」とそのまま申し上げるべきなのだけれど、「そんなふうにぶっきらぼうに、せっかくのおことばをぞんざいに扱うわけにもいかないし……」

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第二十段 といひ口をしがる…第七章 春の歌

覚えてないの?それはダメでしょ

と言って、悔しがっているのもおもしろい。 知っている、と申し出る人がいないときは、そのまま続けて(帝が)詠み上げてしまわれるのだが、「これはみんな知っているはずの歌じゃないの」という感じで。 「どうしてこんなに情けないのか」と嘆きながらも、古今集をたくさん書き写したりしている人は、全部覚えていてもおかしくないはずなのにね。

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第二十段 「村上の御時、宣耀殿の…」第七章 春の歌

「村上の御時、宣耀殿の女御と聞えけるは、小一條の左大臣殿の御女におはしましければ、誰かは知り聞えざらん。まだ姫君におはしける時、父大臣の教へ聞えさせ給ひけるは、一つには御手を習ひ給へ、次にはきんの御琴を、いかで人にひきまさらんとおぼせ、さて古今の歌二十卷を、皆うかべさせ給はんを、御學問にはさせたまへとなん聞えさせ給ひけると、きこしめしおかせ給ひて、御物忌なりける日、古今をかくして、持てわたらせ給ひて、例ならず御几帳をひきたてさせ給ひければ、女御あやしとおぼしけるに、御草紙をひろげさせたまひて、その年その月、何のをり、その人の詠みたる歌はいかにと、問ひきこえさせたまふに、かうなりと心得させたまふもをかしきものの、ひがおぼえもし、わすれたるなどもあらば、いみじかるべき事と、わりなく思し亂れぬべし。そのかたおぼめかしからぬ人、二三人ばかり召し出でて、碁石して數を置かせ給はんとて、聞えさせ給ひけんほど、いかにめでたくをかしかりけん。 御前に侍ひけん人さへこそ羨しけれ。せめて申させ給ひければ、賢しうやがて末までなどにはあらねど、すべてつゆ違ふ事なかりけり。いかでなほ少しおぼめかしく、僻事見つけてを止まんと、ねたきまで思しける。十卷にもなりぬ。更に不用なりけりとて、御草紙に夾算して、みとのごもりぬるもいとめでたしかし。いと久しうありて起きさせ給へるに、なほこの事左右なくて止まん、いとわろかるべしとて、下の十卷を、明日にもならば他をもぞ見給ひ合するとて、今宵定めんと、おほとなぶら近くまゐりて、夜更くるまでなんよませ給ひける。されど終に負け聞えさせ給はずなりにけり。 うへ渡らせ給ひて後、かかる事なんと、人々殿に申し奉りければ、いみじう思し騒ぎて、御誦經など數多せさせ給ひて、そなたに向ひてなん念じ暮させ給ひけるも、すきずきしくあはれなる事なり」

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第二十段 など語り出させ給ふ第七章 春の歌

帝もびっくり!私の読書量

などと語り出しになる。帝もお聞きになって、感心してほめてくださり、「どうしてそんなにたくさん読めたのだろう、私は三巻・四巻でさえ読み終えられないだろう」とおっしゃる。「昔は身分の低い者もみんな風流心があっておもしろかったものだ。最近はこのようなことが聞こえてくるだろうか(いや、聞こえない)」などと、御前に控えている方々や、帝の女房で中宮様のところへの出入りを許されている方々なども集まってきて、口々に話し出したりしているときは、本当に何も心配なことがないように感じられる。

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第二十一段 清涼殿の丑寅のすみの第七章 春の歌

毎日目に入るホラー障子

清涼殿の北東の角にある、北側の仕切りの御障子には、 荒れた海の絵が描いてあって、そこに生き物たちが恐ろしそうな顔で描かれているの。 手が異様に長い「手長」や、足が異様に長い「足長」なんかもね。 上の御局(お部屋)の戸を開けると、いつもその絵が目に入ってくるから、 みんなで「もう、やだ〜!」なんて言いながら笑ってるのよ。

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第二十一段 勾欄(こうらん)…第七章 春の歌

桜より映える男がいた

手すり(勾欄)のそばに、青い大きな壺を置いて、 桜のとても見事な枝を、長さ五尺(約150cm)くらいのものを、 たくさん挿してあるから、手すりの外にまではみ出すくらい咲き広がっていて、 お昼ごろ、大納言様が、桜色の直衣(のうし)をほんの少し柔らかくなじんだ感じで着こなし、 濃い紫色の固紋の指貫(はかま)に、白いお召し物を重ねて、 一番上には濃い色の綾織りの、とても鮮やかなものをのぞかせて参上なさったところ、 帝がこちら側においでになるので、 戸口の前にある細い板の廊下に腰をおろして、何かをご報告申し上げていらっしゃる。

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第八章 御簾の内に
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第二十一段 御簾の内に第八章 御簾の内に

袖がはみ出てますよ

御簾の内側では、女房たちが、桜色の唐衣をゆったりとくつろいで脱いでいて、 藤色や山吹色など、色とりどりにセンスよく重ねた着物が、 たくさんの小半蔀の御簾からはみ出すように見えている。 昼のお部屋のほうからは、お食事を運ぶ足音がバタバタと高く響いてくる。 警護の人たちが「おし(道をあけよ)」などと声をかけている。

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第二十一段 と言ふ声きこゆるも第八章 御簾の内に

花より食事が呼んでる

「(食事の準備ができました)」と言う声が聞こえてくるのも、 うららかでのんびりとした日の様子など、とても趣深いのに、 最後のお膳を持った蔵人(くろうど)がやって来て、お食事の準備ができたことを申し上げると、 中の戸から(帝が)お渡りになる。お供として廂(ひさし)の間から、 大納言殿が、お見送りのためにいらっしゃって、 さっきの花のそばに戻ってお座りになった。

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第二十二段 すさまじきもの第八章 御簾の内に

それ、完全に興ざめです

興ざめなもの。昼間に吠える犬。春になってから使っている網代(魚をとる仕掛け)。三月・四月になっても着ている紅梅色の重ね着。牛が死んでしまった牛飼い。赤ちゃんが亡くなってしまった産屋。誰も火をおこさない炭びつや囲炉裏。学者なのに娘ばかり続けて生まれること。方角が悪いからと泊まりに行ったのに、ちゃんともてなしてくれない家。それが節分の夜ともなれば、もうほんとうに興ざめもいいところ。 遠い地方からわざわざ届いた手紙なのに、何もお土産が入っていないもの。

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第二十二段 京のをもさこそ思…第八章 御簾の内に

返事どころか手紙ごと帰ってきた件

都に住んでいる人も、きっと同じように思っているだろうけど、都ならいろんな面白いことや、世の中の出来事なんかも耳に入ってくるから、それはそれでいいよね。 でも、誰かに心を込めてきれいに書いて送ったお手紙の返事が、まだ届かないのかな、なんか変だな遅いな……ってじりじり待っていたら、さっき自分が送ったあの手紙が——折りたたんだのも、結んで丸めたのも——すっかりくしゃくしゃによれよれになって、上に書いた墨もかすれて消えかかった状態で戻ってきて、「(あいにく)ご不在でいらっしゃいました」

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第二十二段 もしは第八章 御簾の内に

迎えに行ったのに空振り⁉︎

あるいは、「物忌み中なので受け取れません」と言われて持ち帰ってきた使いの人……もう、なんともがっかりで、しらけた気分になる。 また、絶対に来るはずの人のところへ牛車を迎えにやって待っていると、車の音がしてきたので、「あ、来た来た!」と女房たちがわらわら出て見に行ったら、車庫にそのまま引き込んで、轅(ながえ)をドサッと降ろしているのを見て、「どうだったの?」

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第二十二段 と問へば第八章 御簾の内に

夫よ、なぜ来ぬ😩

と聞いてみると、「今日はよそへお出かけになるとのことで、こちらにはいらっしゃいません」などとさらっと言って、牛を全部引き出してそのまま行ってしまう。 また、家にいるはずの夫が来なくなってしまったのも、本当に興ざめだ。ふさわしい縁だと思って宮仕えに出したのに、なんとなく恥ずかしいような気持ちで待っているのも、まったく気の毒というかなんというか。 子どもの乳母が、ちょっとだけのつもりで出かけてしまった間、あれこれあやして「早く帰っておいで」

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第二十二段 と言ひやりたるに第八章 御簾の内に

ドキッとしたのに別人!

「今夜は行けません」と返事が来たのは、興ざめなだけでなく、本当に腹立たしくてどうしようもない。女性を迎えに行く男性なら、なおさらどんな気持ちだろう。 待っている人がいる家に、夜が少し更けてから、そっと門をたたく音がする。胸がちょっとドキッとして、人を出して誰か聞かせると、まったく関係ない、どうでもいい人が名乗って現れた——これを「興ざめ」と言うだけでは、まだ足りないくらいだ。

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第二十二段 験者の第八章 御簾の内に

得意顔が空回り中

祈祷師が、物の怪を退治しようとして、すごく得意げな顔で、独鈷や数珠なんかを持たせて、蝉が鳴くみたいにしぼり出すような声でお経を読んでいるんだけど、物の怪はちっとも気にする様子もなくて、護法善神もちっともやって来ない。周りに集まった人たちが一生懸命お祈りしているのに、男も女もみんな「あれ、おかしいな」って思いはじめて、時間が経つまで読み続けてすっかり疲れ果てて、「まったく憑かない。もう帰れ」

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第二十二段 とて第八章 御簾の内に

眠いのに起こさないで!

と言って、数珠を取り返して、「ああ、まったく効き目がないわ」とつぶやきながら、額の上のほうへとずり上げ、自分からあくびをして、そのまま横になって寝てしまった。 ひどく眠いと思っているときに、たいして親しくもない人が、無理やり起こして、しつこく話しかけてくるのは、本当に興ざめでがっかりする。 除目(じもく)(=朝廷の役職を決める儀式)で、望んでいた役職をもらえなかった人の家(のがっかり感といったら、もう最悪だ)。

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第二十二段 今年は必ずと聞きて第八章 御簾の内に

昇進パーティーが空振りな件

「今年こそきっとご昇進がある」と聞いて、昔からお仕えしていた人たちで、今はよそに仕えていたり、田舎っぽい所に住んでいたりする者たちが、みんな集まってきて、出入りする牛車の轅(ながえ)がすき間なく見えるほど。お寺参りのお供にも「私も私も」と競うようについていき、飲み食いしてわいわい騒ぎ合っているのに、夜が明ける暁になっても、(昇進を知らせる)門をたたく音がちっともしない。「おかしいな…」と耳をそばだてて聞いていると、先払いの声だけが聞こえてきて、上達部(高貴な方々)がみなぞろぞろと退出されていった。

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第九章 もの聞きに
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第二十二段 もの聞きに第九章 もの聞きに

昇進できず人が消えていく朝

任命の知らせを聞こうと、前の晩から寒さに震えながら待っていた身分の低い男が、いかにもがっかりしたようすで歩いてくるのを見ている人たちは、気まずくて声もかけられない。よそから来た人なんかが「殿はどんなお役職になられましたか」などと聞くと、答えには「なんとかの前司(もとの国司)になられました」などと、決まって返事をする。 ほんとうに出世を期待していた者は、もう心底がっかりして沈みこんでいる。 夜が明けると、すき間なくぎっしり詰めかけていた人たちが、一人、二人とそっと抜け出して、いなくなってしまった。

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第二十二段 古き者どもの第九章 もの聞きに

指折り数えてウロウロしてる

古株の家来たちが、(主人のそばを)なかなか離れられそうもない様子で、来年の国々(の受領の任地)を、指を折って数えたりしながら、うろうろと歩き回っているのも、なんともおかしくて、興ざめな感じがする。

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第二十四段 :人に侮らるる物第九章 もの聞きに

バカにされがちな五選

人からバカにされてしまうもの、 家の北側。それから、お人好しすぎると周りに知れわたっている人。年をとったおじいさん。また、ぼんやりしてパッとしない女性。崩れかけた土塀。

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第二十六段 :心悸する物第九章 もの聞きに

平安女子もドキドキしてた

ドキドキするもの、 スズメの雛を育てること。赤ちゃんが、遊んでいる場所の前を、通り過ぎるとき。いいお香を、焚いて、ひとりで、横になっているとき。唐の鏡が、少し曇っているのを、のぞき込むとき。素敵な男性が、牛車を止めて、話しかけてきたり、取り次ぎを頼んできたりするとき。髪を洗って、化粧をして、お香がしみ込んだ衣を、着るとき。特に、誰も見ていないところでも、心の中は、やっぱり、うきうきする。待っている人がいる夜に、雨の音や、風が吹いて揺れる音がすると、ついはっと、目が覚めてしまう。

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第三十四段 木の花は第九章 もの聞きに

桜より橘推しです

木に咲く花の中では、濃い色でも薄い色でも、紅梅がいちばん素敵。桜は、花びらが大きくて、葉の色が濃く、枝が細くてそこに咲いているのがいい。藤の花は、花房が長く垂れて、色が濃く咲いているのが、本当にすばらしい。 四月の終わりから五月の初めごろ、橘の葉が濃くて青々としているところに、花がとても白く咲いていて、そこに雨がしとしと降った翌朝なんかは、この世のものとは思えないくらい風情があっていい感じ。花の中から黄金の玉かと思うような実がのぞいて見えて、すごくあざやかに見えているのなんて、朝露に濡れた夜明けの桜にだって負けていない。

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第三十四段 ほととぎすのよす…第九章 もの聞きに

梨の花、見直してみたら

ホトトギスとゆかりが深いと思われているからだろうか、もうそれだけで、何も言いようがないくらい素晴らしい。 梨の花は、この世で最もパッとしないものとして、身近に飾ったりもしないし、ちょっとした手紙に枝を添えることさえしない。愛嬌のない人の顔を表現するときのたとえに使われるくらいで、たしかに、葉の色からして、なんとなく冴えない感じがする。ところが、中国ではこの上なく素晴らしいものとされていて、詩にまで詠まれている。それならやっぱり何か良さがあるはずだと、じっくり見てみると、花びらの先に、なんとも言えない愛らしい色合いが、ほんのりと感じられるのだった。

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第三十四段 楊貴妃の第九章 もの聞きに

梨の花、推しすぎ問題

楊貴妃が、帝の使者に会って泣いていた顔にたとえて、「梨の花が一枝、春の雨にしっとりと濡れている」などと詠んだのは、よほどのことだと思うけれど、それでもやっぱり、あの梨の花の素晴らしさは、他に並ぶものがないと感じてしまう。 桐の木の花が、紫色に咲いているのはやはり風情があるのに、葉っぱの広がり方ときたら、なんとも大げさでうっとうしいけれど、それでも他の木と同列に語っていいものでもない。中国でも大層な名前のついた鳥(鳳凰)が、わざわざこの木だけを選んでとまると言うのだから、やはりただならぬ気品がある。

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第三十四段 まいて琴に作りて第九章 もの聞きに

普通の言葉じゃ足りない!

まして、それを琴に作って、さまざまな音色が生まれてくるなんて、「風情があるね」なんて普通の言葉で言い表せるものじゃない。もう、本当に素晴らしいのだ。 木の見た目はちょっとパッとしないけれど、楝(おうち)の花はとても風情がある。まばらに、他の花とは違った雰囲気で咲いて、必ず五月五日(端午の節句)に合わせて咲くのも、なんともいいなあ。

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第九十二段 かたはらいたきもの第九章 もの聞きに

やめて!見てるから!

いたたまれない気持ちになるもの。 ちゃんと弾きこなせもしない琴を、音の調整もせずに、全力で弾きまくっているとき。 お客さんと話しているときに、奥の部屋からくだけた話し声が聞こえてくるのに、止めることもできずに聞いている気持ち。 好きな人がひどく酔っぱらって、同じことを何度も繰り返しているとき。 自分がそこで聞いているとは知らずに、人の悪口を言われたとき。 それは、大した身分の人でなくても、使用人などでさえも、本当にいたたまれない。

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第九十二段 旅立ちたる所にて第九章 もの聞きに

見てらんない!の瞬間集

旅先なんかで、身分の低い使用人たちがふざけてくっちゃべっているの。 かわいくもない自分の子どもを、親バカ全開で「かわいい!かわいい!」って溺愛して、その子が言ったことをそのまま真似して自慢げに話してくれちゃったりするの。 学のある人の前で、学のない人が、いかにも「私、知ってます」って顔して偉そうに人の名前なんかを口にするの。 たいしてうまいとも思えない自分の歌を人に話して、「すっごく褒められちゃった♪」なんて言うのも、もう見てられない!

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第十章 うらやましきもの
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第百五十一段 うらやましきもの第十章 うらやましきもの

すらすら読める人がうらやまし!

うらやましいもの お経などを習って、すごくたどたどしくて、すぐ忘れてしまって、何度も何度も同じところを読み直しているのに、お坊さんはもちろん、男の人も女の人も、すらすらと気持ちよさそうに読んでいるのを見ると、「あの人みたいに、いったいいつになったら読めるようになるんだろう」と、ふとそう思ってしまう。 体の具合が悪くて横になっているときに、けらけら笑いながらおしゃべりして、何も悩みなんてないみたいにすたすた歩き回っている人のことは、ほんとうにうらやましいなあと思う。

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第百五十一段 稻荷に思ひおこし…第十章 うらやましきもの

遅れてどうする私よ

稲荷神社にお参りしようと思い立って出かけたのだけど、中の御社あたりがもう本当につらくて苦しくて、それでも必死にがんばって登っていたら、少しも苦しそうな様子もなく、私より遅れてきたはずの人たちが、あっさりと私を追い越してどんどん先にお参りしていく。もう、すごくうらやましい。 二月の午の日の夜明けに、急いで出発したのに、坂の途中までしか歩けなくて、気づいたらもう巳の刻(午前十時ごろ)になってしまっていた。

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第百五十一段 やうやう暑くさへ…第十章 うらやましきもの

あなた強すぎでしょ!

だんだん暑くまでなってきて、本当につらくて、「こんな思いをしない人だって世の中にはいるのに、どうして参拝なんかに来てしまったんだろう」とまで思って、涙がこぼれてきて休んでいると、三十歳すぎくらいの女性が、きちんとした旅装束というわけでもなく、ただ着物をひっかけただけの格好で、「わたしはね、七回お参りするつもりなんですよ。もう三回は済んだし、残り四回なんてたいしたことないわ。お昼には下山できるでしょう」と言う。

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第百五十一段 と道に逢ひたる人…第十章 うらやましきもの

うらやましすぎる人たち

と、道でばったり会った人にさらっと言い放って、すたすた行ってしまったのよね。普通の場所だったら目も向けないようなことなのに、あの人の立場だったら今すぐなってみたいと思ったわ。 男も、女も、お坊さんも、素敵な子どもを持っている人って、本当にうらやましい。髪が長くて美しくて、髪の生え際なんかも見事な人。高貴な身分で、周りの人にお世話してもらえる人も、もう心底うらやましい。字が上手で、和歌も上手に詠めて、何かあるたびにまず真っ先に名前が挙がるような人。

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第百五十一段 よき人の御前に第十章 うらやましきもの

字がうまいってずるい!

身分の高い方のそばに、女房たちがたくさん仕えているのに、気品ある場所へ送るべき手紙などを、「みんなだって鳥の足跡みたいな字じゃないでしょ」と思うけれど、わざわざ下のほうにいる人を呼んで、硯を下ろして書かせなさる——それがもう、うらやましいったらない。

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第百五十一段 さやうの事は第十章 うらやましきもの

うらやましいのは本音でしょ

そういったこと(文の書き方)は、その場所の大人になってしまえば、実際に「難波わたり」のような遠くもない言葉も、場合に応じて書くものなのに、これ(今の話)はそうではなくて、高い身分の方のもとへ、あるいは初めて宮中に上がろうとしている人の娘などには、特別に気を配って、上の方から始めてきちんと整えさせてくださっているのを、みんなが集まって、冗談半分にうらやましがって言っているようだ。 琴や笛を習うときだって、まだ上手くない頃は、あの人みたいに早くなりたいと思うものでしょう。

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第百五十一段 うち東宮の御乳母第十章 うらやましきもの

うらやましすぎる人たち

内裏や東宮のご乳母、上の女房として宮中への出入りを許されている人。三昧堂を建てて、夜や明け方に熱心にお祈りされているような人。双六を打っているとき、相手がちょうど自分の欲しいサイコロの目を出してきたとき。本当に心から世の中を捨てた、清らかな聖人。

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